器と盛り付けには相性がある
「食器は料理の着物」や「この料理をどの器に盛り付けよう、そうやって料理は完成する」と、かの北大路魯山人も言ったように、器と盛り付けは魅せるということにおいても、相互にとても大切な関係です。そして、その土地の食材や素材は、その土地で採れた土で作った器で盛るのが相性が良いのです。しかし、「器」と一言で言っても、色や形、素材など特徴も様々で、料理に対して適した物の選び方に困ることもありますね。この講義では、島根でものづくりにたずさわる方々を訪ね、その人たちの考え方や技術や奥深さだけでなく、同時に、その土地の食文化や食材にも触れ、「魅せる盛り付け」を実践する学びの時間です。
島根の手しごと 石見のものづくり
本講義の過去2期の企画では、島根県東部(出雲地方)を舞台の中心に、根強い「民藝文化」に触れるものでした。東西に長い島根県は、地域の成り立ちも異なり、手しごとも食も様々。第3期となる今回は、島根県西部(石見地方)が舞台です。
石見地域は、もともと良質の陶土に恵まれ、窯業が盛んで、はんどうと呼ばれる水がめが量産されました。耐水性に優れ、貯水に最適であったことから、江戸から明治にかけては、北前船を使って全国津々浦々に出荷されました。その技術は今も尚受け継がれ、水瓶だけでなく、瓦や日用食器にいたるまで、地元の人々に愛用されています。
また、同地域で梳かれる石州和紙も有名です。ユネスコの無形文化遺産にも指定された技術は、約1,300年もの間、職人の手で一貫して保持されるとともに、新しい発想からおもしろい文様や柄を取り入れたプロダクトも多数作られています。
このまちでしかできないこと
石見地方は、小さな集落が点在する、いわゆる地方。「便利」な町は他にも多くあっても、今回たずねる方々は皆、「ここでしかできない(この地だからこそ出来る、ものづくり)」と言われます。その言葉は、「ここでしか生まれないもの」にもつながっています。作り手の方々の暮らしと営みを体感しながら、実際に形になった物たちを手にとってみると、また違った愛着が生まれてきます。
<盛り付け>でクリエイティブを体験する
本講義には、盛り付けデザイナーの飯野登起子さんを教授にお招きします。グラフィックデザイナー出身で、現在は料理の盛り付けデザインや百貨店のディスプレーデザイン、食のプロデュースをお仕事とされる飯野さん。飯野さんは、テーマを設けた料理研究会をご自宅で1 0 0回近く開催される一方、プライベートでは「green食堂」という少人数のゲストを招いたおうちパーティーを楽しまれてい ます。お皿の上の食材も並べ方によって驚くほど印象が変わります。意外なメニューがパーティーフードになるなど、季節や目的に合わせた「魅せる盛り付け」を、プロに学んでみましょう。見るだけで美味しい、楽しい空間の魅力に、心を掴まれるはずです。
一本の道で繋がる、尾道と島根
かつて、人々は島根県の石見地方と尾道を結ぶ銀山街道(石見銀山の中心地であった大森より銀や銀鉱石を港へ運ぶために利用されていた旧街道)を利用し、塩や銀、人、情報、文化が交わり、歴史を築いてきました。尾道には出雲屋敷という建物が現存しており、ここは、出雲国松江藩から御用塩や綿などの交易の為、藩の役人達が常駐する出張所として使われていたそうです。現在では、 島根と尾道をつなぐ1本道は島根県松江市と広島県尾道市を結ぶ「中国やまなみ街道」として、そして出雲屋敷は、どなたでも暮らすようにゆったりと過ごすことが出来る「せとうち 湊のやど」として活かされています。地域に暮らしながら、地域の魅力をカタチにするお仕事をされている三浦大紀さんの感じている島根の食と手しごとの魅力と、盛り付けデザイナーとして日々様々な器との出逢いを楽しまれている飯野登起子教授と巡る2日間。尾道から山を越え、心惹かれる島根の手しごとをじっくり巡ってみませんか?
ご縁の国、島根でお待ちしています。
(第3期募集開始日 2018年6月6日)
・自己紹介と飯野先生から講義の内容を説明 ・飯野先生の盛り付けデザインプレゼンテーション ・盛り付けデザインレクチャー(地域と盛り付け/ 盛り付けデザインにおける器の役割について)
・森脇製陶所、わたぶんアートファブリックを訪ねます。わたぶんアートファブリックでは、機織り体験(ランチョンマット制作)を行います。
・温泉でリフレッシュ!
島根の食材をつかった郷土料理を、島根の器たちに盛り付けデザインします。
パーティー会場は尾田家。第3講義で盛り付けた島根県浜田市の郷土料理を、島根美食倶楽部のメンバーと堪能します。
・宮内窯、石州和紙会館を訪ねます。宮内窯では陶芸体験(お茶碗、平皿などの制作)を行います。石州和紙会館では、和紙漉き体験を行います。
・総括