【いぐさ部】2017年植付


カテゴリ:blog コラム | 投稿日:2017年12月19日

いぐさ部の岩渕です。12月17日は、いぐさの植え付けを行いました!

前日、あるお家の倉庫を借りて準備をしていました。黒い板状のポットから、苗を取り出し、育ちの悪いいぐさ苗とそうでないものをより分けながら、90株を1束にしていくというものです。

この束が総数56ケ。水田1坪分で2束使う計算です。素人の私といぐさ栽培の先生とで、1日でようやく仕上がりましたが、昔はこの何倍もの数を、数日かけて夫婦・家族で準備したのだそうです。

今は、住宅でも和室が極端に減り、畳の需要もなくなったから、そこまで作る必要がなくなったのだけれど、と。お菓子を食べてお茶をしたり、お昼をとったり、時にはテレビで流れるダイジェスト版の大河を横目に、世間話をしながら、手は止みませんでした。

そうして準備をしながら、「寒すぎて風が強すぎたら、せっかく植えつけたいぐさが倒れてしまうし、よくないねぇ」・・・との話していたところ。米稲は多少倒れても、自力でまっすぐ育つが、いぐさは倒れるとそのまま育ってしまうため、風をきらう。まだまだ学ばねばならぬことは沢山あります。

そんなこんなでさて翌日。

17日の早朝は風も無く、日差しもあってぽかぽかしているくらい。これはできる!と、朝10時には長靴を履き。集まったメンバーは総勢6名、いぐさの手植えを開始したのでありました。

メンバー構成は建築家2人、会社員1人、林業従事者1名、そしていぐさ部2人というなんとも濃いキャラクターが集まりました。氷が張る水田に、型付けという車輪をつかって植えるポイントをつけたあと、1人で6列をいっせいに植えます。これが、ぬかるんだ地面に長靴で、中腰で後退しながら植えるというので、翌日の筋肉痛を恐れながらも、みんなが順番にいぐさの束を手に取り、一心に植え付けをはじめました。田圃は2畝(せ)と、例年の1反に比べて非常にコンパクト。昼には差し入れの美味しいおでんを食べて英気を養い、17時ごろに無事作業を終えました。当たり前ではありますが、体中、どろどろ。心身ともにへろへろ。

思えば、田圃探しから、株分け、育苗、そして耕運機の運転から、水の入れ方から、ひとつひとつ誰かに教えていただきながら、周囲の方々にお世話になってここまできました。最後の最後までお世話になった、建築事務所issey studioの杉原さん、いぐさ栽培の先輩方、植え付けに駆けつけてくれた友人たち、見守ってくださった多くの方々に、ありきたりではありますが、感謝の気持ちでいっぱいです。

みんなの力で繋いできた、このいぐさたちは夏に刈取られ、主にワークショップや円座、畳の素材として使用します。こうして素材から育てるため、いぐさ部は、ワークショップの参加者さんに対して、よりリアルな話ができるようになってきました。育てるのがしんどいな、つらいなと思っても、ここでふんばる。なぜなら、いぐさを育てた後も、私たちはこのいぐさで、「どうしてもやらなければならないこと」があるからです。

せとうちで育ついぐさは、かつてその名を全国にとどろかせ、名産品として今も知られていますが、この地に暮らす人たちが、くらしで直にいぐさに触れる機会は多くありません。日々の生活の中でいぐさに触れる機会が少しでも増えるといいな。この機会を増やすことが、私たちの使命だと思っています。

水や肥料の塩梅を学びながら冬を越し、春を迎え、夏を待とうと思います。

よいいぐさができますように。


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