『第3回 ローカル子育てサミット』イベントレポート


カテゴリ:blog イベント コラム 事務局からのお知らせ | 投稿日:2020年03月30日

はじめに

こんにちは!尾道自由大学クリエイティブチーム(事務局)の高野です!

2020年3月1日(日)に尾道で開催された『第3回 ローカル子育てサミット〜わたしのまちの、これからの学校のかたち〜』(子育て支援NPOむかいしまseeds主催)の運営に携わらせて頂き、そこで感じたことや学んだことを、当日の模様と共にお伝えします。

《当日の流れ》
13:30 主催 むかいしまseeds代表 青山さん挨拶
13:35 舟木さん、中村さんのお話(キーノート①②)
14:20 ご意見、ご質問記入
14:25 ゲストとの対談
15:15 グループに分かれて対話
15:40 意見のシェア
16:00 終了

今回のテーマは「わたしのまち、これからの学校のかたち」ということで、ゲストに島根県津和野町で高校魅力化コーディネーターをされている中村純二さんと尾道のお隣、福山市で中学校教諭(数学の先生)をされている舟木耕太さんをお招きし、まずは、お二人の活動をそれぞれ紹介して頂きました。

キーノート① 舟木耕太さん

まず最初は、舟木さんのお話。ご自身が取り組まれている「子ども主体の授業づくりや学校づくり」についてご自身の経験(人生)を振り返りながら語って頂きました。

自然に囲まれた環境で外遊びに夢中になった小学校時代から一転して、中学校時代は「順位」や「評価」など「他人と比べられる」文化に息苦しさを感じ、「自分なんか…」と自己否定的な考え方をするようになり、それは大学生時代に海外ボランティアを経験するまで続いたそうです。

海外ボランティアがキッカケとなり価値観の転換を経験した舟木さんは、その後、自分自身が最も悩んだ「中学校」の先生となり、「良い先生になりたい」という思いで、現在も授業に部活にと、日々取り組まれています。

そして、もう一つの転機となったのが、ご自身のもう一つの夢を叶えるために「青年海外協力隊」として、アフリカ(モザンビーク)に(結婚したばかりの奥さんを日本に残して)渡られたことでした。

アフリカでの暮らしは、日常的に自分で鶏を捌いて食べるなど、驚きの連続。でも、何よりも驚いたのは、家庭訪問で訪れた生徒の家では、村に電気も来ていない中でも、庭にソーラーパネルがあり、子ども達はスマホを使って勉強していました。

その光景を見た舟木さんの中に「知識を自分で取りに行ける時代の学校とは?」という現在の取り組みに通じる「問い」が生まれました。

来年度(2020年度)より小学校でスタートする新学習要領にも、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。そして、明るい未来を、共に創っていきたい。」文部科学省)という想いが込められるなど、社会の変化に合わせて「学校教育」をどのように変えていくのか?ということに注目されています。

知識偏重の教育を受けてきた私たち大人は、つい「英語」や「プログラミング」といった目新しい領域に目を奪われますが、大切なのは、「主体的な学び」「地域との協働」「本物に触れる」ということであり、舟木さんのスライドにもあるように、変革の結果、自動車工場がドローン工場に変わっただけでは意味がありません。

・学校における「べき」論からの脱却
・学校は「工場」ではなく植物が自分らしく育つ豊かな「土壌」
・「誰もが過ごしやすい、誰もがやり直せる、誰も置き去りにしない(学校)」
・「より良い学校づくり」から「より良い社会づくり」へ

といったメッセージが散りばめられていました。

舟木さんのお話を聞いた会場の方からは、「学校や先生へのイメージが変わった」「学校は変わらないと諦めていたけど、もう一度学校に協力してみようと思った」といった意見が聞かれました。

キーノート② 中村純二さん

続いて、島根県津和野町 高校魅力化コーディネーターの中村さんのお話です。

中村さんも、東京都で小学校教諭と働かれたあと、偶然にもアフリカ(マダガスカル)で働かれたご経験があり、自分の中での常識が打ち砕かれ、今に至ります。

「わたしのまちの、これからの学校のかたち」というタイトルで、①津和野町での事例紹介 と、②なぜそういう取り組みが必要なのか? ということについて、データやグラフなど豊富な資料交えてお話頂きました。

学校はまちづくりに重要

最初に印象に残ったのは、「学校はまちづくりに重要」というメッセージでした。学校に関する取り組みは、通常、文部科学省や教育委員会の管轄ですが、津和野町の「高校魅力化プロジェクト」は移住促進の取り組みとしてスタートした経緯があり、地元の高校(津和野高校)では、統廃合ラインギリギリだったところからの回復を果たしています。

また、学校と地域が協働し「ホンモノの学び」「リアルな地域の課題を考える」「地域の為になる学び」に取り組むことによって、大人が成長し、地域が変わるという影響が生まれることがわかりました。

「これまでの学校は人口排出機関ではなかったか?」

現在の東京や都市部への人口集中は、いわゆる「高学歴」「高収入」「勝ち組」といった価値観がベースになっており、人口減社会で地方を維持/活性していくためには、「地域」にもっと目を向ける人を増やす必要があります。

つい数十年前までは、農林水産業も製造業も今よりも盛んで、様々なリアルな仕事が地域に残っていて、「ホンモノの学び」が暮らしの中に沢山ありました。しかし、今は、それらの産業の衰退が問題になっており、少子高齢化社会も相まって、地域の持続可能性に危険信号が灯っています。

「大人になっても、自ら学び続ける人」

地域の持続可能性が問われる中、これからの社会では、どんな時代が来ようと、世の中の変化と向き合い、対応していく力が求められます。そして、そういう力を持った大人が地域に増えていくことで、更に子ども達にとっての「学び」が深まる地域の「土壌」が豊かに育っていきます。

そして、この地域における「土壌」の豊かさこそが、学校における教育プログラム以上に、子ども達の学びの深さに関わるということも、調査の中でわかってきたそうです。

「どのような環境で学ぶか」「誰と学ぶか」ということの大切さは、従来の一斉授業を中心とした「知識」を教え込むスタイルの教育とは、根本的に考え方が違う様です。

ゲストとの対談

ゲスト講師の舟木さんと中村さんのお話が終わり、質疑応答の後、ここからは来場者からの感想や意見を伺いながらの対談へと移ります。

会場からは、

「一市民が学校を変えるにはどうしたら良いですか?」
N高についてどう思いますか?」
「ゲームについてどう思いますか?」
「海外の経験から何を学ばれましたか?」

などの興味深い質問が寄せられ、続いて、それぞれのグループに分かれてのグループセッションへと移りました。

グループに分かれて対話

グループセッションでは、中村さんから、「地域住民として どうやったら 学校と上手に連携・協働できると思いますか?」というお題が投げかけられ、会場には、小学校教諭や保育園の園長さん、冒険遊び場を運営されている方、読み聞かせボランティアとして学校と関わっている方、議員さんなどが参加されていて、色々な地域/立場の違いから、様々な意見や感想を聞くことが出来ました。

《会場の声を一部紹介》
「やっぱり先生達は忙しいので、地域住民が先生をどうサポート出来るのか?」
「様々なボランティアを通して、とにかく学校と関わることから始めると良い」
「せっかくコーディネーターを入れても、行政や地域の人との連携が上手くいっていない地域もある」
「舟木先生のきらりルームの捉え方がとても前向きで目からウロコだった」
「行政や学校、どこかに一人はキーマンがいるので、キーマンを探す」

まとめ

最後に、ゲストの舟木さん、中村さんから、グループセッションを踏まえて、まとめのお話をして頂き、あっという間の2時間半のローカル子育てサミットが終了しました。

舟木さん「今日は色々なお話を聞くことが出来て、いつか、自分の勤めている学校の保護者の皆さんとも今日の様に腹を割って話せる場を持ちたいと思いました。(一緒に考えて行こうというスタンスで臨んで貰えれば)学校がもっと壁を下げていけると思うし、地域と交流しようという先生も増えると思います。」

中村さん「先ほどのお題に対する答えとしては、まず“地域が上手になること”です。①学校のこと、先生のことを知ること、②出来ていることを認めてあげて否定しないこと、③先生のやりたいことと自分のやりたいことを沿わせていくことが連携のポイントだと思います。これは、協働やまちづくりにも通じる基本だと思います。」

①学校のこと、先生のことを知ること
②出来ていることを認めて、先生を否定しないこと
③先生のやりたいことと自分のやりたいことを沿わせていくこと

「学校を変える」というと、どこから手を付けたら良いのかわからないような、とても困難なことのように思えますが、先生や学校を否定したり、自分の意見ばかりを声高に主張するのではなく、中村さんのような柔和なスタンスであれば、どこからでも少しずつ、可能性を広げながら、取り組みを始めていけそうだと感じました。

誰にだって学校は変えられる。誰にだって社会は変えられる。

子ども達と「リアルな地域の課題を考える」ことを通して、子ども達だけでなく、それに関わる大人たちが成長し、地域が変わっていくという実体験を積んでこられた中村さんのポジティブな考え方は、「トラブルが当たり前」という海外で、「さあ、そこからどうするか?」と、課題解決に取り組んで来られた経験からこそ、身に付けられたのだろうと感じました。(元々の気質なのかもしれませんがw)

また、「生徒を誰も置き去りにしたくない」という想いに真っ直ぐな舟木さんの言葉に、「学校や先生のイメージが変わった」という声が多く聞かれました。

感想

新興国の台頭や地球環境の悪化など、社会の変化に合わせてこれからの日本の「学校教育」をどのように変えていくべきか?これまで、現場で実践されてきたお二人からは、多くの学びと刺激を頂くことが出来ました。また、会場にお集まり頂いた皆さんの子ども達を想う気持ちに触れられたことも貴重な経験でした。(高野)

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