暮らしのなかの漆 ―金継ぎ―


カテゴリ:コラム | 投稿日:2014年09月02日

学びのタネを探しに三原の漆芸家を訪ねる

8月最後の週末、尾道は久しぶりの晴天でした。

講義のないこんな日も、尾道自由大学は動いています。 中村校長と、いつもの小川&白鳥で、「わくわくする新たな学びのタネ」を求めて車を走らせます。

車中

この日訪れたのは、三原市でご夫婦で漆芸家をされている、田代京子さん。伝統技術である漆芸の後継者を育成する、香川県漆芸研究所で学ばれたそうです。

お見せいただいた作品は、美しい縄の模様が入った「縄胎(じょうたい)」という技法による器。持つと見た目以上に軽くてびっくりしました。 「縄胎は、麻布とひもを漆で貼り固めて作るので、木よりも薄くて軽く仕上がるんです。しかも、保温性が良くて、陶磁器と違ってアツアツのものを入れても手で持てます。」という。

普段の生活の道具の中に、漆をもっと活かしてほしい。そう話す田代さんのお家では、あちこちに漆が生きています。 食器のほか、ダイニングテーブルの塗装に、曲げワッパのお弁当箱の内側に、やかんの持ち手に。塗ることで防腐性、耐水性、耐熱性をもたらす漆は、機能性から見ても生活の中で役立ってくれそう。

お弁当箱

箸置き

私の中で、”高級品”というイメージが強かった漆。田代さんのお話を伺っているうちに、「あ、家で使っているあれも漆で塗れば…」「ナチュラルが好きなあの人に、こんなものをプレゼントしたら…」と、普段の生活の中に持ち込みたいシーンがどんどん思い浮かんでワクワクしてきました。

物を大切にする和のココロ 金継ぎ
今回の訪問の最大の目的はこれ!「金継ぎ」についてお伺いすることです。お気に入りでよく使っていた器、昔から家にある大切なお皿。使えば使うほど、欠けたり、うっかり割ってしまったりする確率は高くなりますよね。 漆の接着作用を利用して、割れたり欠けたりした器を再生させる技術、金継ぎ。仕上げには金や錫で装飾されていて、美しい独特のラインとなります。 金継ぎが行われるようになったのは安土桃山時代で、茶の湯が盛んになるとともにその技術が確立され、現代に受け継がれています。

見せていただいた作品は、継ぎの部分がまるで着物の帯のようで、割れる前の姿よりも締まってカッコいいのでは?と思えるくらい。 田代さんいわく、「金継ぎの醍醐味は器の作者と修繕する者、二者の手と心が入り、この世にひとつだけの器となること」だそう。

金継ぎ1

金継ぎ2

金継ぎを入口に、漆をもっと生活の中に取り入れたい。そしてモノをより永く、より大切に使おうという気持ちを持ちたい。 そんな学びをみんなと共有できたら… 講義化に向けて、始動します!

▼田代京子さんの作品HP
http://www.urushiro.com/

Posted by. Shiratori


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