講義名:坊主トリップ | レポート公開日:2019年05月28日
歴史建造物である「古寺」を巡り、尾道の街に脈々と受け継がれる暮らしや信仰を学び、そこから自分の人生について紐解く旅。
向島にある「西金寺」というお寺のご住職を務められている若き僧侶、菅悠生教授のご案内のもと、尾道の由緒ある三つのお寺「浄土寺」、「天寧寺」、「摩訶衍寺」を訪ねました。
お坊さんとまちを歩くという経験は普段なかなか出来ないので、袈裟を着られたお坊さんの後ろ姿を見ながら歩いていると、それだけでもタイムスリップした様なとても不思議な体験でした。
天寧寺のご住職にご案内頂き、尾道のまちを眺めながらお話を伺うと、尾道は港町として知られていますが、実はその起源は平安時代に遡り、昔から商業のまちとして栄え、特に人々の信仰心が厚かったということもあり、まちには多くのお寺がつくられ、そして現在に至るまで大切に受け継がれているということがわかりました。
これまで、尾道自由大学では様々な切り口から尾道のまちをフィールドとしたまち歩きを開催してきましたが、お坊さんと一緒にお寺を巡るというのは、新たな試みであり、どんな講義になるのかドキドキしながら当日を迎えました。
講義は、オノミチシェアにある尾道自由大学のメインキャンパスからスタート。
教授のご紹介や受講生のメンバー同士の自己紹介の後、受講生さんのお話を伺うと、、、、
「大学で建築を学び、設計士として働いているが、お坊さんからお寺を案内して貰えるという機会は珍しく貴重なので」
「教師として子供達に日本の歴史いついても教えているが、仏教をどのように捉え、どのように伝えていけば良いかを学びたい」
と、それぞれ、ご自身が受講されたきっかけや動機を語って頂けました。
最初に訪れたお寺「浄土寺」は聖徳太子の開創と伝えられる真言宗のお寺で、中国地方屈指の古刹として親しまれています。
瀬戸内海の要所として、港の繁栄と共に町の衆に支えられた当寺の本堂、阿弥陀堂、多宝塔は荘厳の一言です。
浄土寺僧侶の方によるご案内のもと、寺院の中を拝観させて頂き、古くから地域の人々や訪れた旅人たちに愛されてきた「人々のためのお寺」の姿を感じることが出来ました。
浄土寺さんでは、知らなければ見過ごしてしまう様な、お寺の見どころや楽しむコツ、普段なかなか見れないような資料まで見せて頂き、大興奮の一同でした。
お昼は、新開のカフェ「喫茶オルタナ」さんで休憩を挟み、坂のまちにある天寧寺さんと向かいます。
1367年開山の「天寧寺」、国の重要文化財の海雲塔越しに見る風景は、尾道を代表する風景として親しまれています。当寺院は観光の名所であるだけでなく、過去には禅宗の修行道場として、多くの修行僧が天寧寺で研鑽を積みました。
修行道場としての空気を色濃く残す堂内を拝観させていただき、普段自分たちが何気なく見ているお寺のもう一つの姿を知ることが出来ました。
本堂へと上がる階段や襖に描かれている絵の“解釈”一つをとっても、色々な見方があり、「禅」の世界の奥深さを感じることが出来ました。
そして、最後のお寺は尾道市街が車で30分ほど行ったところにある、尾道市原田町、四国まで見渡せる絶景の山頂に座す「摩訶衍寺」。746年に行基によって開かれたと伝えられるお寺です。
深山幽谷の地より文字通り尾道と人々の暮らしを見守り続けてきた寺院で、ご住職より尾道とお寺の歴史を教えて頂きました。
インドから日本に伝わって来た大乗仏教(18宗派)やインドから南方諸国に伝わった上座部仏教など、仏教の“宗派”の基礎知識を教えて頂けたことで、観光地としてあまりに有名な京都の「清水寺」や奈良の「東大寺」なども、それぞれ宗派のある「信仰の場所」なのだということを改めて知ることが出来ました。
最後に、受講生さんの感想をご紹介させて頂きます!
目の前にある物は、どれも誰かの『積み重ね』でできている。
自分の積み重ねは、目に見えるけれど、目に見えない誰かの『積み重ね』こそ、大切に感じ取れる人でありたいなぁと感じました✨
また、あいさつについても学びました。
『いただきます』
どこで育て、どこで採ったのか、そういうことに想いを馳せて言いたいなと思います。
『ごちそうさま』
命をいただきまして、ありがとうございました、このエネルギーを生かしてこの後、顔晴りますという想いで言いたいです。
子どもたちにも伝えていきます!
最後に、何かと何かの2つをただ無意識に繋いでいるけれど、それは本当にそうかな?と自分に問い掛けたいなと思いました。
例えば、お腹が空く=辛い?と繋げているのも自分。
なので、ただ「お腹が空いたなぁ」と思うだけでも良いのです😌よね。解釈次第です。
感情は自分が選ぶものなんだなぁと改めて感じました。
本当に有難い1日でした。ありがとうございましたm(__)m
3つの尾道古刹を、現役僧侶の教授にナビゲートして頂ける、、、
これだけで、新鮮で魅力的な講義だと思い、即申し込みさせて頂きました。
結果は、人生の中で2度目の大きな学び・発見の機会となり、大満足でした♪
1度目は、学生時代、谷崎文学『陰翳礼讃』を読んだ時。建築を学ぶ学生として「建築技術」や「建築史」などの視点からお寺を学んでいたのですが、本書では作家目線での日本文化が綴られ、非常に新鮮でした。その結果、古寺巡礼の旅に出たほどです。(国宝建造物の過半を制覇)
2度目の今回は、現役僧侶(=仏教世界の中の人)目線で、趣の異なる3つの寺院の世界観を満喫させて頂きました。
浄土寺【観光】=日本美術継承の場としてのお寺
天寧寺【修行】=開かれた精神修養の場としてのお寺
摩訶衍寺【歴史】=由緒正しき仏教史認識の場としてのお寺
政教分離の影響なのでしょうか??詳しくは勉強不足ですが、仏教と地域社会との距離感を感じる人も多いと思います。でも、今日お会いしたどのご住職も、お寺と市民・地域社会との関わり方を、真摯に模索・実践されているように感じられた1日でした。
お寺のミライが楽しみになりました♪
お天気にも恵まれ、“社会人大学生”日和となりました。
気持ちの良い1日に感謝です。
熟慮された講義構成をして下さった菅教授、丁寧に解説講義してくださった各お寺のご住職様、そして、1日和やかに過ごさせて頂いた他の受講生の皆様、本当にありがとうございました!
少人数での開催だったからこそ、菅教授をはじめ、訪れた「浄土寺」「天寧寺」「摩訶衍寺」のご住職、僧侶の皆様にも、受講生それぞれの質問や想いやに、全力で答えて頂けた、とても濃密な1日となりました。
それぞれ、宗派も歴史的な背景も異なるお寺を訪れ、お話を伺うことで、これまで、あまり意識することのなかった仏教の“多様性”を感じることが出来ました。
これまで、観光地としてのお寺には色々訪れたことがあるのですが、その本来の意味である“信仰の場”としては、「自分の家は○○宗だから違うな」と、とても狭く捉えてしまっていたことに気が付きました。
本来、仏教は、元を辿ると全ての宗派がお釈迦様の教えに繋がり、その伝え方/学び方の違いが宗派の違いとなったもの。今回の講義を通して、仏教やお寺のことを学んだことで、自分のその時の心のあり方や目的によって、“選んで行く”というお寺とのお付き合いの仕方、楽しみ方もあるのだということを学ぶことが出来ました。
10人が受講すれば、恐らく10通りの学びや気付きの得られるこの講義。気になっていた方も多いと思いますので、是非、次回開講される時には、ご一緒して頂けると嬉しいです!
また、菅教授が教授のもう一つの講義『禅のある暮らし』は1〜2ヶ月に一度開講しておりますので、是非そちらもチェックして頂ければと思います◎
(text:『坊主トリップ』第1期キュレーター 高野哲成)