講義名:島根美食倶楽部とめぐる、石見の旅 手しごと探訪編 | レポート公開日:2018年10月15日
こんにちは。自由大学(東京)の「おいしい盛り付け学」第1期生、尾道自由大学の「島根美食倶楽部と巡る、窯元の旅」第1期2期生の西尾絵里子です。今年の4月から地元の長野県木曽郡木曽町の地域おこし協力隊として活動しています。
「演出された日の料理は記憶に長く残る」「盛付に正解はない」
飯野教授の「おいしい盛り付け学」を受講したときに記憶に残る言葉です。
東京で受講しようとしたきっかけは、もともと「食べることが好き。」「料理がキラキラしている様子が好き。」ではあったものの、自分が作る料理の盛付けが性格上とても「雑」。‘もっときれいに盛り付けられたら日々の生活がもっと素敵になるのでは’と思い受講しました。
講義内容は、皆でお皿の中で料理を自分なりにどう表現するかを切磋琢磨し合い、最終講義に自分で作品をプレゼンテーションします。私は、皆の前で発表・表現することは苦手なタイプでしたが、いざやってみたら、‘以外に楽しいかも?’と思い、自分なりに何か発信してみようかな?と思う第一歩になりました。
そんな時、飯野教授より、島根県で島根のお皿と食材を使って皆でテーブルデザインする講義がリリースされると聞き、もともと、島根に興味があったことと重なり、早速申し込み参加しました。それから、2016年の第1期、2017年の第2期、そして2018年の第3期と全て参加しています。
「その土地の食材や素材は、その土地で採れた土で作った器で盛るのが相性が良い」ということで、第1回、2回は、島根県東部の窯元を巡り、民芸の技術「用の美」に触れ島根の食材・食文化に触れ「魅せる盛付」を学びました。講義中に、地方に潜んでいる大切な文化や歴史を知ることでき、また、キュレーターの三浦さんが、ふるさとの島根へ熱いの思いから、東京からUターンし、株式会社シマネプロモーション会社を作ったというお話を聞いたことがきっかけで、「自分の故郷にもいいものがあるかも?」思ったきっかけになりました。そして、今回は前年度とは場所を変え、島根県西部を巡る「石見の旅 手しごと探訪編」です。
1日目は「森脇製陶所」見学から始まり、「やさか村ワタブンアートファブリック」で機織り体験、夜は島根美食倶楽部の方々との盛付け実践。2日目は「宮内窯」で作陶体験と「西田和紙工房」で紙漉き体験、石州和紙会館にて振り返りというワークショップが盛りだくさんの内容でした。
【森脇製陶所】 http://www.morisei.net/
島根の農村風景が広がる静かな工房を訪ね、森脇さんの作品に対する想いを聞きました。
森脇さんの実直な人柄とやさしさが作風に反映されていて、器を手に取ったときにとても優しい手触りとフォルムでした。
心に残っている言葉は、「頭で考えすぎるとあまりいいものが生まれない。今目の前にあるもので考えてポンっとできたものの方がいいものができる。」
その言葉通り、工房の中は普通にある物で工夫されて作業されていました。
とても素敵な工房でした。
【やさか村ワタブンアートファブリック】 http://www.oideyo-shimane.jp/1009
おびただしい数の機織り機が並んでいて、圧巻な光景でした。
帯を織る工場でしたが、一旦閉鎖されましたが、絹浴用タオル「キビソ肌友だち」を織る工場として再スタートされたそうです。
機織り機を使って、工場の授業員のお母さん達に教えてもらいながら、今回はテーブルクロスを織りました。自分の好きな糸と下地を選び、トントンと心地よい音ともに、機織りに集中しました。機織り初体験でしたが、とても楽しく、その時間に癒されました。
【島根美食倶楽部の皆さんと島根の食材で盛付実践】
島根美食倶楽部の皆さんが心をこめて作ってくれた、島根の郷土料理や食材を、キュレーターの三浦さんのコレクションである沢山の民藝の大皿に、皆でワイワイと盛り付けます。皆さん、それぞれ好きなように、時々飯野教授のアドバイスももらいながら盛り付けます。それぞれ個性が出ていて興味深いです。
個人が盛り付けた後は、飯野教授によって微調整や全体のバランスを見ながら、お花や、カトラリーなど、その日機織り体験でつくったテーブルクロスなどを使って1つのテーブルを作ります。いつも、この瞬間がワクワクします!
私は猪肉の煮物を盛り付けたのですが、何かもう1つ足りない・・・と思っていました、そのとき、飯野教授に栗の枝を添えていただき、みるみるうちに、とても魅力的なお皿になりました。
とても素敵な島根の石見地方らしい楽しいテーブルになり、皆さん感激されていました。私もいつものことながら、その時の季節と場所を飯野教授の感性でテーブルが完成されていく現場を見ることができ、とても幸せな時間でした。
【宮内窯】 http://miyauchipottery.com/about
島根県江津市にある宮内窯で作陶体験をしました。工房を訪ねると良く見る茶色の水甕(みずがめ)が沢山並んでいました。昔は水道がなかった時代はあの大きな甕に水を溜めていたそうです。まず思ったのは、どうやって、人があの大きなみずがめを作るのだろう?と思うくらいとても大きかったです。
作陶用の粘土を作るのかなどの工程の説明のあと、奥にある体験室で作陶しました。無心に粘土を捏ね、その後自分の作りたい、皿、マグカップ、などを手びねりで作ります。宮内さんの説明では簡単そうに作られていましたが、実際に作ると、思うような形にならず苦戦しました。でも、無心になって粘土を捏ねるということはとても楽しく、あっという間に時は流れました。
それから約1カ月、焼いていただいたものを送ってくださいました。箱を開けたところ、宮内さんがとても素敵に釉薬の色をつけて焼いてくださったので、とっても素敵なに仕上がっていました。これから、大切に日常使いしていきたいです。
【西田和紙工房】 http://www.nishida-washi.com/
ユネスコ無形文化遺産登録された、石州半紙。西田さんの工房では地元の楮を使用し、原木から皮とり、加工も一貫して工房で作られているそうです。実際に、木から和紙ができるまでの工程を見させていただきましたが、紙漉きにするまでの工程が長く、大変な苦労をされているのだろうなと思いました。
その後、実際に紙漉き体験をしました。上手にできるかドキドキでしていましたが、意外にも簡単に紙漉きできました。漉いた上に好きなデザインで葉や花などを置いて、すぐに乾かしていただき、あっという間に和紙ができ上がりました。
実際に触ってみるととても丈夫で、なんとも言えない手作り感。後で調べたのですが、石見神楽なども、この石州和紙が使われており、約1300年もの間、石見(石州)地方では、手すき和紙が漉き続けられ守られているそうです。これからも、絶やすことなく続いてほしいです。
【石州和紙会館】
石州和紙の製造工程紹介や工房で作られた和紙の販売もありました。現代的にアレンジされた和紙などは、東京の料亭などにも使われているそうです。
【振り返り】
3回目の島根県でしたが、まだまだ潜んでいる、島根の魅力にまた魅了されました。と同時に、地元の長野県の木曽地方を重なってみえることが沢山ありました。機織り体験は、地元の木曽町の廃校でも実施していることや、和紙は、南木曽の田立和紙があります。陶器はないけれど、木の器はたくさんあること。島根でも猪を食べこと…など。また、島根県の人の暖かさと、奥ゆかしさも、木曽地方と同じだな。としみじみ感じました。
やはり地方は首都圏よりも、いろいろな文化や歴史があり、とても面白いと思います。また、いつか飯野教授を木曽にお招きして、木曽ならではのテーブルを皆で作りたいなと改めて思いました。実現できるように、私も努力したいと思います。
(taxt by.西尾絵里子(木曽町地域おこし協力隊))