記憶と香りのフシギな関係
わたしたちは毎日、たくさんの“香り”に包まれながら生活をしています。朝のトーストが焼ける香り、本屋さんの新しい本の香り、雨の時の地面から漂う香り、夏の潮風の香り、小学校の教室の香り・・・。さかのぼってみると、わたしたちは数えきれないほどの“香り”に出会っているのがわかります。そして、好きな香り、嫌いな香りは人それぞれ。自分にとっては心地よくても、他の人にとってはそうではないことも、よくあります。
嗅覚は、五感の中で唯一、怒ったり、喜んだり、哀しんだりする感情や本能に直接つながっていると言われ、香りはわたしたちの記憶にも強く作用していると言われています。たとえば町を歩いていて、ふと懐かしい香りがして、それにまつわる幼いころの出来事や風景を思い出してしまうことはありませんか。これは「プルースト効果」といい、ある香りを嗅ぐことで、昔の記憶が鮮明に呼び起される、ちょっとフシギな現象です。
香りが人に与える影響には、まだまだ知られていないヒミツが隠されているようです。暮らしの中の香りを意識し、自分の嗅覚にちょっとだけ気持ちを向けることで、好きな香りや必要な香りをみつけることができ、日常をより豊かにすることができるはず。
柑橘から香りの抽出をしている教授から学ぶ
教授は大三島に移住して、農薬や化学肥料を使わず、おひさまと潮風の力を借りて柑橘(温州みかん、はっさく、大三島ネーブル、いよかん、レモン等)を栽培する松田康宏さん。移住して、自然に生かされているという感覚になり、大三島は四季を通して多彩な香りにあふれた島だと感じ始めたそうです。そして、ポルトガルの伝統工芸品である水蒸気蒸留器を手に入れ、はっさく、みかん、レモンなどの柑橘の香りの抽出を始めました。現在ではシトラス&アロマ「島香房」という小さな蒸留所を作り、無農薬柑橘のエッセンシャルオイルやせっけんなどを作り、島の豊かな恵みとしての農産物や旬なアロマをお届けし、心と体に優しいライフスタイルを提案されています。
香りの木である柑橘をまるごと楽しんでみよう
「同じはっさくでも果実の皮、花、葉っぱの部分でそれぞれ香りが違います」と教授。ビターオレンジ(和名:ダイダイ)は、”香りの木”と呼ばれ、春に咲く甘い香りの花はネロリとして、ウッディーで木香のある枝葉はプチグレンとして、成熟果の甘酸っぱい香りの果皮はビターオレンジ精油として、季節ごとに異なる作用を持つ精油が採れ、その香りを楽しむことができるそうです。それは、はっさくやレモンなどの他の柑橘の木でも同じです。
気持ちを香りで表現してみる
この講義では、まず“香り”と“人の記憶”の関係を考えていきます。そして、柑橘の種類ごと、花や葉っぱや皮などの部位ごとに香りをかぎ分けながら、その違いについて感じてみましょう。教授の栽培する自然豊かな柑橘の畑に行き、香りの原料となる花や葉っぱを摘み、水蒸気蒸留器を使って抽出してみます。自分の気持ちを香りで表現するために、フローラルウォーターづくりしてきます。香りを贈りたい人を思いながら、その人にどんな香りがぴったりか考えながら、作っていきます。
最後の講義ではこれまでの学びを通して、香りに対して自分がどんな感じ方をしているか、一緒に考えていきます。受講後は、暮らしの中の香りと向き合いながら、今の自分に必要な香りや心地よくなる香りを見つけ、自分と香りのよい関係がつくれるようになるはずです。
■プログラム内容
・時間 10:00~17:00(間に休憩あり)
・フィールドワーク
「香りを抽出してみよう」
畑で香りの原料(柑橘の葉っぱ)を採集し、蒸気蒸留法による香りを抽出してみます。抽出した香りはフローラルウォーターとしてお持ち帰りできます。
「振り返り」
(第4期募集開始日 2018年8月13日)
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