講義名:香る風景学 | レポート公開日:2016年09月05日
こんにちは。8月20、21日に大三島で開講された「香る風景学」第1期卒業生の本多です。普段は東京で暮らしています。今年は少しだけ長めの夏休みを取って、大好きな瀬戸内海の島々巡りの途中、大三島でしまなみライナーを途中下車し、尾道自由大学で初めて講義を受講しました。大三島はちょうど3年ほど前に伊東豊雄建築ミュージアムを見に来て以来。そのときはミュージアムを見て、大山祇神社で涼むだけでした。外から見るだけだった農園の風景の中に何があるのか、大三島のさらに内側へ入ってみたいと思っていました。「瀬戸内レモン」など瀬戸内地域の柑橘が最近人気になっているけれど、どんな種類、特徴があるのだろう。そして自宅に「積読」状態のアロマオイル・・・柑橘、香りには詳しくないからこそ参加したいと思い、受講を決めました。
3年ぶりの大三島は快晴
今治からしまなみライナーに乗り、大三島バスストップで下車、集合場所の道の駅 多々羅しまなみ公園には早めの到着。天気は快晴。風はなく波は穏やか。瀬戸内海ならではの優しい海の色、多々羅大橋の風景がとても綺麗。ただ、とても暑い日。サイクリストたちが続々と休憩に集まってくる中、集合時間まで日陰を探しながら周辺を散策していました。受講生のみなさんが集合後、今回のキャンパスとなるカフェ・木工雑貨のお店「1 plus 7」さんへ。教授の松田さんとその奥さん、お子さんが迎えてくれます。
思い出の香りのお話からスタート
1コマ目は、まず自己紹介とそれぞれの「思い出の香り」についてのエピソードを話しました。今回の受講生はアロマサロンでの働いている方、柑橘農家の方、大三島に移住予定の方・など、プロフィールも住んでいる場所の様々でした。そして、松田教授から香りの抽出方法について学んでいきます。柑橘精油の抽出には、熱を加えず、果皮にそのまま圧力を加えて抽出する「圧搾法」と、蒸留釜を使い、果皮を熱して抽出する「水蒸気蒸留法」があるとのこと。それぞれメリット・デメリットがあるが、松田教授はより香りにやわらかさが出る「水蒸気蒸留法」抽出しています。
数十種類のエッセンシャル・オイルによる調香体験
2コマ目では青八朔、甘夏、レモン、ハーブ・・さまざまなエッセンシャル・オイルの違いを嗅ぎ分けながら、数種のオイルをブレンドして、調香をしていき、バスソルトを作りました。容器にはデコレーションをして完成。完成後はそれぞれのバスソルトの香りを嗅ぎながら、感想をシェア。朝の目覚ましになりそうな香り、良い睡眠を促してくれそうな香りなど、みなさんの好みの違いが、バスソルトの香りの違いにも表れていました。
1日目の講義終了後に、松田さん夫妻とキュレーターの蔦木さん、受講生のみなさんで地元の海鮮料理がいただけるお店で懇親会。この日は星がとても美しい夜でした。今夜は大山祇神社の近く、ゲストハウスに宿泊。
柑橘畑の中で感じるレモンの葉の香り
2日目も真夏日。3コマ目は、フィールドワークとして松田教授の柑橘の農園に向かいます。まずは、レモンと八朔の葉っぱや実を採取して、葉っぱはちぎり、実は爪で傷をつけた部分の香りを嗅いでみました。すると、実はもちろんのこと、葉っぱからも柑橘の爽やかなシトラスの香りを感じることができました!柑橘の葉っぱの香りを嗅ぐのは、初めての経験でした。レモンの葉っぱを太陽に透かして見ると、気泡のようなものがあります。これが、香りの正体です。八朔とレモンの香りの違いを楽しんだあと、レモンの葉っぱをみんなで採取していきます。
時間をかけながら香りを抽出
4コマ目は、この葉っぱを原料に、水蒸気蒸留法をもちいて、香りの抽出をしていきます。今回使用する水蒸気蒸留器は家庭でも使用できる小型のタイプで、実はポルトガルの伝統工芸品だそうです。抽出の方法はとてもシンプル。まずは、原料となるレモンの葉っぱを細かくちぎっていき、窯の中に入れ、そこに水を加えていきます。
蒸気が外に漏れないように蓋をして、接合部分にアルミのシートを巻き、冷却機に水と氷を入れて、火を付け蒸留を開始します。10分ほどすると、香りを含んだ蒸留水(フローラルウォーター)がビーカーに1滴ずつ落ちてきました。フローラルウォーターがたまったビーカーの水面をよく見ると、油の膜が浮いています。油だけを取り出すと精油(エッセンシャル・オイル)になります。
ビーカーに鼻を近づけてみると、ちゃんとレモンの香りがしていました。その後、40分ほど蒸留を続けると抽出は完了。1人1本ずつスプレーボトルにフローラルウォーターを入れていきます。抽出するのにこれだけの時間と手間が掛かるのだと実感しました。最後の講義は、香る風景学を受講した感想とこれから暮らしの中にどのように香りを取り入れ、楽しんでいきたいかなど、それぞれ発表していきました。「アロマの仕事に、水蒸気蒸留法で抽出した柑橘精油も取り入れていきたい」、「手間をかけて丁寧につくられている、抽出の裏側を知ることができて良かった」、「今、製作しているキャンドルに、大三島の柑橘の香りを取り入れていきたい」など、様々な感想が出てきました。
せとうち大三島だからできる直感を育む講義
普段、なかなか見ることのできない、香りづくりの裏側をみて、手作業で時間をかけてつくる楽しさを知ることができました。嗅覚は五感の中で、思考を挟まず脳に伝わるのが一番速いと言います。香る風景学は、ある意味で「考えない」、「直感」の講義。島の風景を見ながら、柑橘の生産から抽出まで体感することができるのは、せとうち大三島だからこそのできる講義だと思いました。柑橘の香りが好きな方、島々が好きな方におススメの講義です。
(text:香る風景学 第1期卒業生 本多由佳)