講義内容
漆と日本人の暮らし
漆と聞くと、「特別なときに使う、高価なもの」というイメージがありませんか?日本での漆の歴史は縄文時代にまで遡ります。長い歴史の中で培われてきた伝統の技は、本来はもっと身近で、日々の暮らしの中で活かされてこそ価値があるものではないでしょうか。
漆の本領は艶やかな「塗装」だけではありません。もう一つの特性として、優れた「接着力」が挙げられます。この2つの役割を存分に活かしたのが、割れたり欠けたりしてしまった器を甦らせ、新たな命を吹き込む「金継ぎ」の技法です。

家に昔からある骨董の大皿、贈り物でいただいた茶碗、旅先で見つけたお気に入りのお皿…これからもずっと使い続けたいと思っていたのに、うっかり傷つけてしまった器を、あなたの手で甦らせてみませんか。
器と向き合ううちに、愛しさが増す
金継ぎの醍醐味は、器の作者と修繕する者、この二者の手と心が入り「この世にひとつだけの器」となることです。器とじっくり向き合い、対話しながら、どのように作業を進めるか、どんなふうに仕上げれば、本体と繕った部分とが美しく調和するかを考えていきます。


そして、完成する頃には、「この器については、誰よりも深く知っている」という自負と愛着がわき上がり、より永く、より大切に使おうという愛しい気持ちが芽生えているはずです。古いものがいまも多く残り、昔ながらの気配が受け継がれる尾道で、器と向き合う時間。器を愛する仲間たちと一緒に「金継ぎ」の技法を習得してみませんか?

漆による接着面を整えているところ

最後に金箔を付けて完成。銀や錫(すず)、漆の色のままの仕上げでも可能です。
■完成までの流れ
金継ぎによる修復作業には、直す器の状態にもよりますが、完成までおよそ5回ほど通って頂く必要があります。(手作業で仕上げますので、自宅で宿題として作業の続きをして頂く方がスムーズに進められます。)
こんなかたが対象です
- 器が好きな方。
- 漆に興味のある方。
- 手しごとが好きな方。
- 器を治せるようになりたい方
- 無心になりたい方。
卒業者の声
- 教授の作品で、器の大きく欠けた部分を埋めて元の形に戻したものを見せて頂いたのですが、漆の強さとか応用が利く点を実感できて興味深かったです。知人の割れた器を修繕していくことで技術を磨いていきたいと思います。
- 金継ぎはもちろん、漆の用途の幅の広さや、丁寧に暮らす愉しさを学べました。本を買ってひとりでやってみようかとも思っていまさしたが、作家さんから、直に見て学ぶよさを実感!疑問が次々にクリアになるって爽快ですね!受講後は、家にある器はもちろん、木製品など漆の活躍の場をついつい探してしまいます。モノを見直す機会にもなりそうです。
講義計画
- 第1回
- ①〜⑤の作業をそれぞれのペースで順番に進めて頂きます。
※直す器の状態にもよりますが、完成までおよそ5回ほど通って頂く必要があります。(手作業で仕上げますので、自宅で宿題として作業の続きをして頂くとスムーズに進めて頂けます。)
①How to 金継ぎ
漆の特性(塗装と接着)を活かした「金継ぎ」の作業の流れを学び、最初の工程として割れたり欠けたりした部分に漆を染み込ませます。また、希望者は金継ぎに欠かせない道具のひとつ「竹べら」を自作します。
その後、各自が持参した金継ぎしたい器を観察し、どのように作業を進めていくかイメージを膨らませます。
②割れた器をくっつける-麦漆(むぎうるし)による接着
市販の接着剤と漆を使った接着との違いを学び、「麦漆」を作り、それを使って器を接着します。割れが多い場合、続きは宿題となります。
③欠けた部分を埋める-錆漆(さびうるし)による埋め
「錆漆」を作り、欠けた部分を埋めます。乾燥に時間がかかるので、その後の行程(錆漆の表面を研いだり、重ね塗りしたりする作業)は宿題となります。
④美しく仕上げるために-黒漆による下塗り
割れと欠けを修復した部分に金を蒔く前に、漆で下塗りをします。この作業によって、金継ぎ面が滑らかに美しく仕上がります。
⑤金で仕上げる-金粉蒔き
金粉を蒔くために再び継ぎ目を漆でなぞった後、金粉を蒔いて完成させます。
- 持ち物、その他注意事項
- ・教材費(道具一式と材料の漆)として、6,000〜10,000円程度かかります。金額は仕上げに使う材料の違いによりますので、相談しながら揃えて頂きます。
・金継ぎしたい器を各自ご持参ください。事前準備として、破損部分を歯ブラシ等で磨いて細かい破片を取り除いたうえ、中性洗剤で丁寧に洗い、3日以上乾燥させておいてください。
(釉薬がかかっていない素焼きのもの、時代の古いもの、大きな欠片のあるものは高度な技術が必要になりますのでご遠慮ください。別途、田代教授に修理を依頼して頂くことも可能です。)
※直したい器がない場合はご用意することも可能ですのでお申し出ください。
・初回にはカッターナイフや小刀を持参ください。
・体質によっては漆でかぶれる可能性がありますので、肌の露出を控えた服装での受講をお勧めいたします。
・宿題として自宅で作業をして頂くとスムーズに進められます。
- 講義名
- 金継ぎの日
- 定員
- 6名(※新型コロナ感染予防のため定員を見直しております。)
- 日程
- 【火曜日クラス】
4月25日(火)9:30-11:30
【土曜日クラス】
4月22日(土)10:00-12:00
※毎月、火曜日に1回、土曜日に1回開催します。(開催日は受講生の皆さんと相談の上決定します。ご参加頂ける日に無理なくご参加頂けます。)
- 開講決定日
- 現在満席につきご予約受付中です! ※開講決定日について
- 授業料
- 4,000円(税込)
※5回受講券:18,000円(税込) (全1回/税込) ※事前銀行振込
- キャンパス
- 尾道自由大学キャンパス(尾道市土堂2丁目10-24 2F ONOMICHI SHARE)
- 教授
- 田代京子
- キュレーター
- 高野哲成
- 持ち物、その他注意事項
- ・教材費(道具一式と材料の漆)として、6,000〜10,000円程度かかります。金額は仕上げに使う材料の違いによりますので、相談しながら揃えて頂きます。
・金継ぎしたい器を各自ご持参ください。事前準備として、破損部分を歯ブラシ等で磨いて細かい破片を取り除いたうえ、中性洗剤で丁寧に洗い、3日以上乾燥させておいてください。
(釉薬がかかっていない素焼きのもの、時代の古いもの、大きな欠片のあるものは高度な技術が必要になりますのでご遠慮ください。別途、田代教授に修理を依頼して頂くことも可能です。)
※直したい器がない場合はご用意することも可能ですのでお申し出ください。
・初回にはカッターナイフや小刀を持参ください。
・体質によっては漆でかぶれる可能性がありますので、肌の露出を控えた服装での受講をお勧めいたします。
・宿題として自宅で作業をして頂くとスムーズに進められます。