「スケッチブック片手に歩いてみる。」
馴染みの道を歩いていて、あれ、こんなお店あっただろうか。前ここって、何があったんだったかなとか、思い出そうとしても思い出せないこと、ありませんか。現実の世界では今日も一軒の家が建てられ、どこかで古い建物が壊されているけれど、目にとめているひとがどれくらいいるのでしょう。
新しい風景を生み出す建築家という職業に就き、地方と呼ばれる松永で生まれ育ったイッセイ先生こと杉原一正さんと、古き良き町を歩き描きとめていく「オールドタウンスケッチ」講義が始まります。
「塩と下駄のマチ、羽原川(はばらがわ)のこと」
今回歩く広島県の福山市内にある松永という地域は、尾道の隣町。昔、ここは大部分が海でした。およそ400年前に干拓が始まり、その後、明治時代まで塩田産業がさかんに行われていました。
今も、羽原川沿いには小さなバルコニーのような建具が、ぐいっと川沿いにせり出すように取り付けられた建物が並んでいます。これは塩を直接運搬できるように、船が横付けできる仕様になっているのです。ここから塩を積んだ船は、川を下り松永湾に出でて、日本各地を目指しました。
当時の船の構造上、荷を下ろして軽くなった船は揺れやすくなるので、帰路も塩に相当する重さの荷物を持って帰らねばなりませんでした。そこで、船乗りは現地で木材を買って松永に戻ってきたといいます。
その木材は、塩を煮詰める際の燃料になると同時に、下駄の材料にもなりました。下駄づくりは松永の一大産業として栄え、今では日本全国でも類をみない「松永はきもの資料館」があるほど。塩と下駄が、松永に住む人たちの暮らしを支えました。
こんな風にのどかな町の中で働き者が暮らす風景を想像させる素敵なエピソードが、今もこの町に息づいています。
「ニューとオールド、どっちもラブ。」
ふいに取り壊される家屋も、倉庫も、お店も、誰かの暮らしの舞台でした。今、羽原川周辺でも例外なく、取り壊される家屋が増えたといいます。古い建物が壊されることばかり、なにか違うものが新しく建つことばかりに着目してしまいますが、その余白にあった暮らしのこと、じっくりみつめてみませんか。
絵がうまい、へたではなくて、2018年の羽原川と松永の一コマを、受講生みんなで味わい、記憶を繋げていきましょう。
10:30 Issey Studio 集合 ※車が無い方は10:00に松永駅集合
講義説明 教授紹介
10:45 下駄を製造販売されていた方の自宅へ移動開始 室内見学
12:30 Issey Studioに戻って食事 ※食材費一律500円が別途発生します。
13:30 羽原川まで移動 散歩スケッチ開始
15:00 スケッチ終了 ふり返り
16:00 解散 ※原則現地解散ですが、車が無い方は松永駅までお送りします。
講義レポートはありません。