講義名:題名のない京都 | レポート公開日:2017年07月02日
京都市中京区にある[Community Store TO SEE]をメイン会場に、二日間に渡って開催された写真講義「題名のない京都」の卒業生たちが撮影した「京都」を講義の感想と共にご紹介します!
講義の中でも撮影後に作品発表と講評・ディスカッションをしたのですが、今回は帰宅後に改めて作品と向き合い、それぞれの写真のタイトルとその写真で伝えたかった/表現したかったことを書いて頂きました。
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晴れ、時々全力 / 新保惠子
新町通りを全力で走る青年。
私達が見てる視線も気にせずに、ただがむしゃらに何往復も。
その瞬間を私も全力で納めずにはいられませんでした。
ゆったりと流れる京都の街並みに違和感すら感じましたが、本当の京都の日常を教えてもらった気がします。
そして彼の全力を見て、私も時々”全力スイッチ”を押さないとなと思いこのタイトルをつけました。彼の躍動感が表現できたお気に入りの1枚です。
中島教授からは、青年にピントを合わせて奥は少しボカすと青年がより引き立たって良いというアドバイスを頂きました。
#9093e0 / 新保惠子
路地を歩いていると、それぞれの家の軒先には花の鉢がいくつも置いてありました。黄色やピンク、紫、緑。
その家のトレードマークのように花達はキラキラとアピールしてます。
こっちも見てよ、と目に止まったのは青鮮やかな紫陽花でした。
まるで梅雨を楽しんでいるみたいに空に向かって笑っている紫陽花。そんな笑顔を上からパシャリ。
構図を考えて青を引き立たせるためにアスファルトを入れてみました。
「紫陽花青」の色彩番号は#9093e0
鮮やかな青色が心に残りこのタイトルにしました。
帰り道 / 新保惠子
夕暮れの帰り道。
色のコントラストが面白くて
バケツ達にピントを合わせての撮影。
でもなぜだろう。ちょっと切なく感じるのは…。
遠い昔の懐しい匂い。
さ、もう帰ろう。
stopped town / 木下陽子
一乗寺に車から降りた時から、「この街はモノクロで撮りたい!」と思いました。
ノスタルジックで時が止まったような街。
信号機もレトロで消えている時にシャッターを押したら、時の止まった街のイメージになりました。
一乗寺駅の線路 / 井上直人
普段はホームから見下ろすかたちで低い位置に視点がある線路。それを線路に近く低い位置から撮影してみました。
線路とホームのブロックとの直線で、奥行きが感じられるところが個人的に好みです。
信じる心 / 木下陽子
詩仙堂ではひたすら上を向いて玉ボケを撮ることに重点を置いていましたが、足元に綺麗なアイリスの花がまっすぐに咲いていたので、花好きな私としては撮らずにはいられませんでした。
背景の土と石が光って玉ボケを撮ることに成功しました!
アイリスの花言葉をタイトルにしました。
キラキラ圓光寺 / 木下陽子
圓光寺には竹林があり、新緑も綺麗だったので、二分割構図にして玉ボケと両方入れました。
望遠レンズ使用。
詩仙堂 襖から望む庭園 / 井上直人
庭園が印象的だった詩仙堂。特に、写真のような襖からも庭園が観賞できるという、日本人の粋を感じられるところに惹かれ撮影しました。撮り終えてから気がついたのですが、肝心の庭園がボケてしまっているので、庭園にピントを合わせた写真でも面白かったのではないかと思います。
圓光寺 縁側から望む庭園 / 井上直人
こちらも立派な庭園が印象的だった圓光寺。
縁側から望む庭園は美しく、室内の装飾と見事にマッチし、素晴らしい景色を眺めることができました。
圓光寺 水面に映える新緑 / 井上直人
縁側から望む庭園も素晴らしかったのですが、園内にある池から望む庭園の景色も素晴らしく、新緑が水面に反射し、神秘的な雰囲気を漂わせていました。
初夏の候 / 馬淵真理子(上3枚)
初夏の光と緑の美しさに心惹かれました。
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《講義の感想》
新保惠子
「基礎も大事だけど、それにとらわれずに自分の気持ちでシャッターを切る。たとえ空だけの景色でも自分が思う京都を撮ればいい。写真に正解はないから。」中島教授が講義の中で話されたことが今も心に残っています。初心者の私にとっては、カメラのイメージが良い意味で裏切られました。基礎のお話も、絞りを蛇口に、光を水に例えてわかりやすく話して下さいました。そのうえで自分の目線で写真を撮ることに重きを置き、自分と向き合うことを考えるヒントを頂きました。
街歩きでの撮影会は初めての経験で、つい良い被写体を探さなきゃと、上手く自分の気持ちでシャッターが切れず、こっそり焦ってました。(笑) それでも、歩いてると自分の目線で京都の日常を感じる瞬間があって、ご近所さんの会話や犬の散歩、子ども達の笑い声や陽の光道だったり、心地よい瞬間が交差して自然とシャッターを切ってました。この街歩きは、私が思っていた京都と少し違う本当の京都に出会えた時間でもありました。ピントやISOが実践できてない部分もありましたが、それも良い課題です。
撮影の発表会では、同じ場所で撮影しても気になるポイントがみなさん違ってて、視点を共有することでまた1つ価値観も広がりました。少人数だからこそ、質問し合ったりアドバイスをもらったり深い事まで聞けたので、講義を通してみなさんとも仲良くなれたのが何よりも嬉しかったです。
今回のお気に入りの写真にタイトルをつけて提出することになり、あの時の感情と今の少し冷静な自分が写真を見返してました。これが自分と向き合うことなのでしょうか。写真に正解がないように、自分らしさもまた正解はないのかもしれません。だからこそ、自分に問い、受け入れること、好きになることで、また写真を撮り続けるモチベーションとなる気がします。
今回初めての写真講義に参加して、カメラ以上の学びの場だったと思います。京都の本当の日常に出会い触れ合えたこや、自分と向き合うことだったり。そう思えたのは、この京都の地でみなさんと出会い刺激を貰えたからです。この経験を第一歩に。
1日目だけの参加でしたが、中島さん、高野さん、受講生のみなさん本当にありがとうございました!
木下陽子
詩仙堂は以前、中島教授の写真集を拝見して行きたかった場所だったので、教授と撮影で行けて良かったです。
圓光寺も教授が教えてくださった知る人ぞ知るお寺なので、人も少なく、ゆっくり撮影出来ました。
一乗寺はゆっくり歩くのは初めてでしたので、まだまだ知らない素敵な風景がある事に気付きました。
「題名のない京都」というように特にテーマが決まっていない方が自由に撮りたいものを撮れるので好きです。偶然出会った風景から生まれる作品が沢山撮れました!
井上直人
座学で写真の撮り方を学ぶ形式の講座は、これまで他の写真講座で受けたことがあったので、フィールドワーク形式の写真講座を希望していました。そんな折、尾道自由大学の写真講座の開講をSNSで知りました。しかも舞台は大好きな京都。
行き先は一乗寺方面の寺院、詩仙堂と圓光寺。どちらも知らなかったお寺です。ちょうど時間がお昼前だったので 、皆でラーメンを食べてお腹を満たしてから撮影することに。こんな自由でざっくばらんな雰囲気も講義の魅力です。
撮影後は、皆で撮った写真をそれぞれの場所ごとに3枚ずつ選び、テーマを決めて発表することに。
何も意識せず、ひたすら惹かれたものにシャッターを押し続けていたので、肝心の部分がピンボケしていたり、その箇所だけを撮っていては、写真から伝わる情報量が少ないなど、「何を伝えたくてそれを撮ったのか」ということが欠けているな、とみなさんからの意見を聞くことで理解しました。
普段、自分の撮った写真をSNSへアップするのですが、「いいね!」を押してもらうのではなくて、きちんと批評してもらうことが、撮った写真のクオリティを高めていくことにとても大事なことだと思いました。
今回の講義で学んだことは、写真は「記録するために撮るもの」だけでなく、「情報を伝える、表現するために撮るもの」でもあるということです。特にこれまでは写真を撮るのに、自分の中で無意識に「記録するために撮る」ことを意識して撮っていたのではないかと思います。
これを「情報を伝える、表現するために撮る」という意識を持って写真を撮っていくようにすれば、より良い写真が撮れるようになっていくんじゃないかな、ということに気付けたのが、今回の講義での大きな収穫になりました。
今回受講したことをきっかけに、これからは、何を撮るのか、なぜそれを撮るのか、どのようにそれを表現したいのか、ということを意識して撮っていきたいです。
馬渕真理子
目から鱗がぼろぼろ落ちました。
京都に越してきて9か月になりますが、どんな写真を撮ればよいか迷っている中で、たった数百メートルの通りにさえ、被写体になるものはいくらでもあることに気づかされました。
基本的な知識は身につけたものの、いつの間にかおざなりにしてきたこと。
自分は観察力がない人間なんだと思い込んでいましたがそうではなく、視点を変える努力を怠っていただけでした。
しゃがんでみる、見上げてみる、じっくり見てみる。そんな些細なことで見える世界が変わってくる。写真を始めた頃のわくわくする気持ちを思い出しました。
また迷うことがあったら、とにかく体を動かす。
そして五感をフル稼働させ、被写体と対峙したいと思います。
ありがとうございました。
(text:題名のない京都 第1期卒業生)
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カメラ歴の長さも腕前も違うそれぞれの受講生が、写真を楽しみ、自分に必要な学びを自分で掴み取る二日間となりました。次回の中島教授の写真講義は、秋に「三度目のオノミチ」が開講予定です。秋の瀬戸内、尾道へ写真を楽しむ旅は如何でしょうか??