器と盛り付けには相性がある
「食器は料理の着物」や「この料理をどの器に盛り付けよう、そうやって料理は完成する」と、かの北大路魯山人も言ったように、器と盛り付けは魅せるということにおいても、相互にとても大切な関係です。そして、その土地の食材や素材は、その土地で採れた土で作った器で盛るのが相性が良いんです。しかし、「器」と一言で言っても、色や形、素材など特徴も様々で、料理に対して適した物の選び方に困ることもありますね。この講義では、島根の窯元を巡り、民芸の技術や「用の美」を探求しつづけている器の奥深さに触れます。同時に、島根ならではの食文化や食材にも触れ、「魅せる盛り付け」を実践して学んでいきましょう。
島根と民芸
民芸品とは、趣味やぜいたく、芸術品ではなく、人々の日常の生活の中で大事に使われてきたもの。古くから陶器作りが行われている山陰地方の窯元では、1920年代に柳宗悦が中心となった民藝運動の影響を強く受け、「使いやすく、かつ美しい」を追求した陶器が今も作り継がれています。当講義で巡る出雲地方では、松平藩主だった松平綱近が1677年、萩焼の陶工を招いたことをきっかけに焼物作りが始まったといわれています。その後、7代藩主の松平治郷(不昧公の名で親しまれている) が江戸時代を代表する茶人でもあったため、茶道具を中心に栄えたそうです。昭和初期には柳宗悦やバーナード・リーチ、河井寛次郎といった面々による民藝運動の影響も受け、日常を美しく彩る器も多く作られています。また、県西部の石見地方は良質の陶土に恵まれ、昔から焼物が盛んに作られていました。粘りがあって腰が強く、硬くて丈夫で水漏れしないことから、1781年頃より、当時の生活には必需品だった大きな水がめを生産するようになり、北前船で各地に運ばれて、その名が知れ渡るようになったと言われています。
目で見て美味しいデザインとは?
<盛り付け>でクリエイティブを体験する
本講義には、盛り付けデザイナーの飯野登起子さんをお招きします。グラフィックデザイナー出身で、現在は料理の盛り付けデザインや百貨店のディスプレーデザイン、食のプロデュースをお仕事とされる飯野さん。飯野さんは、テーマを設けた料理研究会をご自宅で100回近く開催される一方、プライベートでは「green食堂」という少人数のゲストを招いたおうちパーティーを楽しまれています。お皿の上の食材も並べ方によって驚くほど印象が変わります。意外なメニューがパーティーフードになるなど、季節や目的に合わせた「見せる盛り付け」を、プロに学んでみましょう。見るだけで美味しい、楽しい空間の魅力に、心を掴まれるはずです。
一本の道で繋がる、尾道と島根
かつて、人々は島根県の石見地方と尾道を結ぶ銀山街道(石見銀山の中心地であった大森より銀や銀鉱石を港へ運ぶために利用されていた旧街道)を利用し、塩や銀、人、情報、文化が交わり、歴史を築いてきました。尾道には出雲屋敷という建物が現存しており、ここは、出雲国松江藩から御用塩や綿などの交易の為、藩の役人達が常駐する出張所として使われていたそうです。 現在では、島根と尾道をつなぐ1本道は島根県松江市と広島県尾道市を結ぶ「中国やまなみ街道」として、そして出雲屋敷は、どなたでも暮らすようにゆったりと過ごすことが出来る「せとうち 湊のやど」として活かされています。
地域に暮らしながら、地域の魅力をカタチにするお仕事をされている三浦大紀さんの感じている島根の食と民芸の魅力と、盛り付けデザイナーとして日々様々な器との出逢いを楽しまれている飯野登起子教授と巡る2日間。山を越え、海へとつながる島根と尾道の道を、普段の暮らしに溶け込む、心惹かれる窯元をじっくり巡ってみませんか?ご縁の国、しまねでお待ちしています。
(第2期募集開始日 2017年4月7日)
・自己紹介 ・出雲民芸館を訪ね、出雲地方の「暮らしの道具」に触れてみよう ・飯野先生の盛り付けデザインプレゼンテーション ・盛り付けデザインレクチャー (民芸と盛り付け/ 盛り付けデザインにおける器の役割について)
・湯町窯、袖師窯、出西窯を訪ねよう!
島根の食材を使った美味しい料理を、島根の器たちに盛り付けデザインしてみよう
パーティー会場は出西窯。第3回で作り上げた島根の味を味わいながら、窯元さんのお話を伺いましょう。
・白磁工房、舩木窯を訪ねよう! ・総括
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