顔の見える関係で行う、心地よい経済活動
遠くのものに目が行きがちな現代。世界経済に左右されずに、子や孫の代まで安心して続いていく“地域で自立したものづくり”や“経済活動”はどうやったらできるのでしょうか。ふと足元のいいものに目を向けてみると、そこには作った人とのカオが見え、気持ちに触れ、手にしたときに大切にしようという気持ちが芽生えます。
伝統的な技術においては、昔の人のやり方を追うだけではなく、現代の便利さを受け止めて活用する賢さや柔軟さが、次の世代に受け継いでいけるヒントに繋がるはずです。
仕事は生み出していくもの
教授の新里さんは、旅の途中に向島(尾道市)に出会いました。自然素材を使い、地域に根ざした産業を成り立たせる理想の土地と巡り会い、関東から移住しました。
ここで暮らすために見つけた仕事。自分だから出来る仕事をつくっていこうと「立花テキスタイル研究所」を立ち上げました。しまなみの植物を調査・研究し、糸や布を染め、綿の栽培から収穫、糸紡ぎ、縫製までを地域の方と協力しておこない、紹介の場として商品展開をしています。
代表的なのは染色。使う材料は、農家さんの収穫で季節ごとに出るたくさんの木の枝や植物の「いらない」とされていたものをあつめ、研究をしながら「必要なもの」に変化させています。その姿は、まるでやさしい魔法使いのよう。
ものの見方を少しかえると、用が済んだものたちも宝物になり、大切にすると命が吹き込まれていく。いろんな人の目でみていけば、有効活用できる色んなものをみんなで見つけられるはずです。
素朴な中での発見
この講義では、向島という心地よい場所で新里さんの思想に触れながら”糸つむぎ“という、ゆったりと繰り返す行為の中で、土から生まれた物を自分の手で変えていく楽しみに触れます。地元で無農薬で栽培・収穫したコットンで、昔ながらのつむぎ機「チャルカ」を使って糸にする術を学びながら、地域の財産を発見する視点に触れ、暮らしや仕事について考えます。
(第1期募集開始日:2013年9月2日)
尾道駅前から渡船に乗車し、会場である「立花テキスタイル研究所」集合します。新里さんが瀬戸内海に浮かぶ向島を選んだ理由などを伺いながら、テキスタイルの基本や地域との係り方などについて学びます。
見方によって地域の畑はお宝の山。その原石を探し当て、自分で作る魅力を学びます。フィールドを会場から畑に移し、そこに育つ綿花を観察しながら、実際に綿を収穫します。糸は、地域の人や子どもたちが作ったものです。
自分たちで収穫した綿の種取作業を昔ながらの道具(チャルカ)を利用して行い、糸をつむ ぐ手前の作業“篠づくり”までの準備をします。
下準備を終えた材料を使い、実際に糸を紡ぎます。 手を動かしながら、眠った地域の宝物に気が付く視点も学びます。
引き続き糸紡ぎ作業を行います。終了後、各自作品の講評会をおこないます。
講義レポートはありません。