講義名:三度目のオノミチ | レポート公開日:2016年11月08日
はじめまして。「三度目のオノミチ」第3期卒業生のタカノテッセイです。
▲中島教授から指導を受ける著者(右)
はじめに
自分と「写真」との関わりは、これまでiPhoneで撮影した写真をSNSにアップするだけで十分満足していたのですが、今回、「三度目のオノミチ」を受講してみて、なぜ写真が好きな人が旅行にまで一眼レフを持って来るのか、理由がわかった気がします。僕はこの講義を受けるまで、デジカメはオート機能でしか撮影したことがありませんでした。一眼レフを使いこなしてカッコイイ写真を撮ることに憧れはあるものの、大きなカメラを首からさげ、様々な機能を使いこなし、高価なレンズを買い揃えるという長く険しい道(=カメラ道)に踏み込めずにいました。このレポートは、一眼レフを買おうかどうか迷っている人、買ったけど、結局あまり使いこなせなくてタンスの肥やしにしてしまっている人に良い参考になると思います。
講義1日目
講義当日、朝9時に尾道自由大学のキャンパスに集まり、受講生それぞれが宿題として撮ってきた「尾道の印象的な写真」を発表し、選んだ理由、どういう部分が気に入っているかなど、みんなでワイワイと話します。その時の僕の作品がこちら。(一眼レフではなくiPhoneで撮った写真です。)
▲小室浜で行われたライブイベントでの一コマ
浜辺の夕暮れが気持ちよくて、その瞬間を写したもの。画面がほとんど黒くつぶれてしまっていて、「こんな時に一眼レフがあったら」と強く思わされた一枚。
▲岩子島の夕景
この写真は自信作。iPhoneで撮れるギリギリの明るさがあったので、水面の広がりもとても綺麗に写りました。
そして講義は、座学に続きます。「写真=photo + graph(光を描く)」なんてカッコイイ定義を学び、カメラアレルギーの原因とも言える、“露出”と“シャッター速度”の関係や、“ISO値”そして“レンズの選び方“などのカメラの基本をサクッと教えて頂きました。中島教授の教え方が簡潔だったので、食わず嫌いだったのかと思うほど、あっさりと頭に入り、少し練習をしたら、午後からの撮影が楽しみになってきました。
いよいよ撮影へ。
午後の撮影では、尾道の写真を撮り続けて数十年の大ベテラン・尾道寅次郎さん案内のもと、実際に尾道のまちを歩き、座学で習ったカメラの使い方や構図などを試しながら、表現の幅を広げるトレーニングをしていきます。一眼レフを持って歩くと、それだけでいっぱしの写真家になったような気分でワクワクしますね。このワクワク感はiPhoneで撮影するのとは全く別物。尾道に暮らしていてもなかなか観光気分で坂の道を歩くという経験をしたことがなく、受講生同士で見つけた面白いものや綺麗な風景をワイワイと言い合うなかで、「自分の気づかなかった風景に出会う」という講義の醍醐味を味わうことが出来ました。
▲奇跡のショット
ポカポカ陽気に誘われて、寅次郎さんのトレードマークの帽子にタンポポの綿毛が!
放課後(夜景散歩)
1日目の講義終了後は、予定通り夜景の撮影に。寅次郎さんのお勧めの夜景スポットでの課外授業です。一眼レフは、シャッタースピードを遅めに設定することで、よく見かける独特の夜景の表現をすることが出来ます。もちろん三脚も必須です。ちなみに、かのヴィム・ヴェンダース (Wim Wenders)もここから撮影したことがあるそう。
▲浄土寺山から尾道のまちを撮影する
講義2日目
2日目の朝は、1日目に撮影した写真の発表です。お気に入りの写真を選び、テーマを決めて発表します。このテーマを決めるという作業がとても楽しくて、写真展に応募するような気分を味わいつつ、楽しかった午後を振り返ります。テーマを決めて撮るのは多分難しいけれど、好き勝手に撮って、そこにテーマを見つける作業はJust Fanです。それでは、1日目の成果をご覧ください。テーマは『ひかり』です。
▲キャンパスの庭の植物たち
とても天気が良い日で緑が輝いていたので、通りがかった勢いで撮った写真。
▲お寺の境内にて
お寺の屋根の上から差し込む逆光の強い印象が撮りたくてシャッターを切った作品。
▲2枚目とは別のお寺にて
よくある水滴が止まっている写真が撮りたい!と、教えていたテクニックで撮影した作品!(はじめてでも本当に止まりました!)
事前課題で撮影した写真が平面的なのに対して、この3枚の写真では、明らかに奥行きが感じられると思います。でも、まだまだ「何を撮ろうとしているのか」がハッキリと伝わってこないので、次の課題とします。他の受講生の皆さんの発表を見て、同じルートを歩いても、人によって撮影しているものも写真の雰囲気も全然違っていて、改めて写真の奥深さを感じました。その写真を写した理由や、気に入っている点を聞くことで「そういう見方があるのか」という新たな発見があります。また、中島教授の講評は、一枚一枚の写真をじっくりと見て、その良さを更に引き出すためのアドバイスのような感じで、写真の意図をより明確にするためにはどうしたらいいのかなど、とても実践的。「次はこうしてみよう」というモチベーションが自然と湧いて来ます。2回目の撮影では、教えて頂いた構図のアイデアやテクニックをもっと活かすことと、「何を撮るのか、なぜ撮るのか」をより意識して撮ることに決めました。
2回目の撮影へ
そして、食事休憩のあと午後の撮影が始まります。今回は、みんな一緒ではなく、それぞれ思い思いの方向に向かって歩き出します。一眼レフを構える姿は、昨日カメラの使い方を習ったばかりには見えません。そして、撮影の時間が終わると、キャンパスに戻り、作品選びとテーマの選定に取り掛かります。それでは、記念すべき卒業制作の発表です。
僕の今回のテーマは『緑』です。自分がお寺の庭を管理する仕事をしているということもあり、尾道の坂のまちで出会った小さな植物たちに惹かれました。
▲錆びた一斗缶の中でもしっかりと太陽の光に当たって成長している
▲不思議なかたちに曲げられたハンガー
▲石垣の隙間に生えていた小さな花
如何でしょうか?今回の撮影では望遠レンズを使い、より被写体に寄れるようになったということもあるのですが、何を撮ろうとしているのかが、わかりやすい写真になったと思います。つい不安になると、あれこれと説明をしたくなるのですが、これなら安心して見て頂けます。
講義を終えて
中島教授が繰り返し仰っていた「目線」を意識することの大切さ。自分が「何を撮影するのか」「なぜそれを撮影するのか」を意識することで、よりイメージがクリアに伝わる写真が撮れるようになるのだと学びました。こうして、楽しい2日間の講義はあっという間に終わり、手元に素敵な写真と思い出が残りました。今までは、SL機関車を見るような気持ちで見ていた一眼レフも今では頼もしい相棒です。「船頭多くして船山に登る」という言葉がありますが、正にその通りで、これまで買おうと思って何度もネットの口コミや店頭で店員さんの説明を聞きましたが、結局、高いやつ買わなきゃダメそう、面倒くさそう、やっぱやめとこう…となって、購入には至りませんでした。
今後は是非、自分の一眼レフを手に入れたいと思います!何かを習うための最良の方法は、それが大好きな人から習うに限りますね。はじめて習ったのが中島教授で本当に良かったと思います。そして、一緒に参加させて頂いた受講生の皆さま、2日間、ありがとございました。
(text:三度目のオノミチ 第3期卒業生 タカノテッセイ)