講義名:三度目のオノミチ | レポート公開日:2017年12月13日
秋の嵐が迫る中、10月に開催された「三度目のオノミチ」の卒業生たちが撮影した「尾道」の写真を講義の感想と共にご紹介します!
雨の中での講義は上手く行くのだろうか、ルートはどうしようかと、不安な気持ちもあったのですが、その中で中島教授が仰った言葉にハッと我に返りました。雨の日にしか撮れない写真もある。確かに、、普段だったら傘をさして足早に通り過ぎてしまうところ、雨をじっくりと味わいながら歩くと普段とは全然違う尾道が見えて来ました。
それぞれのペースで、それぞれの視点で、「尾道」と向き合った2日間の記録。是非ご覧下さい!
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《作品集》
坂の街、尾道 / 井上直人
尾道の街の特徴の1つとして、山の中腹の古い建物や寺院が印象に残りました。坂道に瓦屋根や石畳といった歴史情緒ある尾道らしさが感じられ、シャッターを切りました。
雨の中、猫の細道にいらっしゃった猫 / 井上直人
尾道は、猫の街としても知られています。猫好きの僕としては、是非とも猫の写真をたくさん撮りたかったのですが、雨のせいか、猫は2匹しか見かけることができませんでした。この写真は、見かけた2匹のうち、屋根の下のベンチにいた猫です。人に怯える様子はありませんでしたが、ちょっと元気がなく、思わず手を差し伸べてあげたくなる様子に心が引かれました。
雨粒と波紋 / 井上直人
雨の日だからこそ、撮ることのできる写真を撮ろうと意識して、渡船を待っている間、桟橋のところでシャッターを切ったら、雨粒が水たまりに滴る瞬間と、波紋が広がっていく1枚を撮ることができました。この写真を撮る前に、レンズの中に雨水が入り込んでしまって、望遠レンズに取り換えて撮ったことも幸いしたのではないかと思います。
新しいオノミチ / 中島布美子
私の知らない尾道を収めたくて撮った写真です。可愛い!オシャレ!!小さい頃、お寺しかないイメージだった尾道がすっかり変わってしまっている。でも尾道らしさは感じられる。そんな構図を探していたところに出会った線路脇に建つステンドグラスのお店。今回教えて頂いた設定で思った通りに背景をボカして柔らかく撮れたお気に入りの一枚です。
慣れた路地 / 中島布美子
私の知っている尾道、これぞ尾道という路地と石畳、坂道(階段)、灯籠、ゴチャゴチャした玄関前が揃った風景での一枚です。全体を見せたかったので、奥がしっかりと映る角度を選びましたが奥の人物が歩き去るのが速すぎて慌てて何枚か撮ったうちの1枚です。
変わりゆく尾道 / 中島布美子
変わっていく尾道の一コマですが、昔みた街並みだけど、何かが違う…古い街に若者が集まり異文化が交流し変わっていく勢いがある…だけどどこかノスタルジック。そんな雰囲気を表現したくて、撮影した祭りの一コマです。賑わいが分かる程度に手前を暗くし、看板の明かりを目立たせ街の雰囲気を出してみました。
10月21日、空のカタチ / 清水伺名子
無限に広がる空が屋根を額縁に見立てるとどう見えるのだろう。
現われたカタチが面白くて撮影しました。
そのサキに何がある?① / 清水伺名子
この先で何かが待っていそうな路地の気配に理由も無く惹かれます。
そのサキに何がある?② / 清水伺名子
路地のもつ雰囲気や光の加減、色の塩梅などを表現したくてシャッターを切りました。
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《講義の感想》
井上直人
6月に「題名のない京都」を受講し、その時は2日目だけ受講したのですが、今回は1日目から受講しました。尾道を2日間ゆっくり楽しみたいということもあったのですが、このところ、写真を撮っても、ブレたり、被写体がボケてしまって、使えないものになってしまうことがあり、初心に立ち返って学び直したいと思ったからです。
1日目から受講し基礎的な部分を学ぶことで、自分がつまずいていた、絞りやISO、シャッタースピードの理解が深まり、いい流れで2日目を迎えることができました。
当日は台風の接近と秋雨前線の活発化により、なかなかの雨でしたが、そんな悪天候でも写真を撮る方法や心構えを学ぶことができてよかったです。また途中、レンズの中に雨水が入り込んでしまい、撮影に支障が出ましたが、そういう時の対処法も知ることができてよかったです。
講義を振り返ると、中島教授が何度もおっしゃっていましたが、「いい写真を撮ることに捉われず、自分の気持ちでシャッターを切る。どうして撮ったのかが大切で、写真に正解はない」ということが、自分が伝えたい写真を撮るために、とても大切だと改めて感じます。写真の良し悪しを考えるのではなく、自分がシャッターを切った瞬間に思ったことや感じたことを、自信を持って人に伝えられるように努めていきたいと思います。
悪天候だったこともあってか、尾道をまだまだ満喫できていない感覚なので、次は晴れた日にゆっくり散策したいものです。中島教授、寅次郎さん、高野さん、そして受講生のみなさん、ありがとうございました。
清水伺名子
「三度目のオノミチ」のタイトルに申し訳ないくらい、これまで尾道を素通りしてきた。目的地までの途中、あるいは目的地の先にある街。それが、尾道自由大学というちょっと変わった面白そうな学びの場や仕組みに触れてみたくて、写真講座なら実益も兼ねられて一石二鳥と申し込みボタンを押した。
全員でカメラを片手に街に出て、決められたエリアで思い思いにシャッターを切る(しかも30枚以上を制限時間1時間ちょっと?で!)。普段如何に風景の表層しか見ていないかを思い知らされた。
見上げてみる、奥をのぞきこむ、細部に目を凝らす、横にずらす、意識の視線を張り巡らせると、商店街の賑わいと通りに咲いた傘の花と美味しそうな屋台の香りとうっかり注文したくなるビールの泡、雨の日特有の湿度、通路の向こうに行き交う電車、遮断機の音、その先に続く階段と坂道、裸電球のぼわんとした灯り、角に立ってお喋りしている若いカップル、路上ライブに見入る子ども・・・撮るべき対象は無数に存在するはずなのに撮れない自分がもどかしい。教えてもらった技術を使えていなかったり、教えられた通りにやってみるのに何か違う(全然違う?!)まどろっこしさ。本当は音や声や匂いも写したいのにそうできないのが歯痒かったり。
まち歩き実技は正直、さっき教えてもらったばかりのことを生かせてないという敗北感?の方が強いが、それでもこの実技のおかげで、尾道の特定のとても小さなエリアに関してだけは、街に触れたという実感が持てた。これがきっと一日目の終わりに中島教授が仰った「自分のために撮る」「尾道だとわからなくてもよい。尾道を自分の街にするつもりで撮る」ということなのかなと思いつつ、ともかく写真を撮ることの楽しさでもあると感じた。
もう一つ、印象に強く残っているのは、お互いに撮った写真を通じてコミュニケーションするというのは言葉での対話以上に人柄を知ることが出来るということ。撮るというのは被写体に何かを託す行為でもあるけれど、作品は撮った人自身のメタファーでもあるのだと感じた。だとすると私にとっての「( )=写真」のカッコの中味は何なのだろう。フレームに収まった風景の先に広がる世界を探してみたい。教えていただいたことを忘れずに実践しながらカッコの意味を探っていきたいと思う。
季節外れの台風のせいで一日目しか参加できませんでしたが、とても印象深い時間となりました。中島教授、寅次郎さん、高野さん、ありがとうございました。
(text:三度目のオノミチ 第4期卒業生)
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同じ場所で撮影していても撮る人によって視点が違い、視点が違うと写真が変わる。これは普段、頭ではわかっていてもなかなか実際には体感できないことで、このことに気付けると、写真を撮るのが急に楽しくなります。
「自分が本当に好きなモノ」を自分ならではの視点で撮影した写真はどれもメッセージ性の感じられる写真ばかり。普段、写真が好きでよくカメラを持って出かける人も、写真を上手くなりたいけどどうすれば良いか分からないという人も、是非、一度体験してみて下さい!
次回の中島教授の講義「三度目のオノミチ」は3月に開講予定。春の瀬戸内、尾道へ写真を楽しむ旅は如何でしょうか??
◾︎日程
1日目 3月24日(土)13:00-18:00
2日目 3月25日(日)10:30-17:00
◾︎授業料
1日目 8,000円
2日目 10,000円
※通し受講の場合 15,000円 (全て税込)
◾︎キャンパス
尾道自由大学メインキャンパス
尾道のまちへ撮影に出かけます。
◾︎教授
中島光行
▶︎「三度目のオノミチ」講義ページ
https://onomichi-freedom-univ.com/lecture/third_time_onomichi.html